もうひとりのパキスタンの少女

遂に出て来ましたか、加計学園問題。朝日新聞が今日の1面で
堂々と報道した。でも、我が家に宅配された版は眞子さま婚約
が一面だったけど。

さて、アメリカ・トランプ大統領の弾劾が先か、我が国の首相の辞任
が先か。どっちだろうねぇ。

あ、文科省は今頃、忖度して文書を処分しているかも〜。

『ナビラとマララ 「対テロ戦争」に巻き込まれた二人の少女』(宮田律
 講談社)読了。

「1人の子ども、1人の教師、1冊の本、そして1本のペン、それで世界
を変えられます。教育こそがただ一つの解決策です。エデュケーショ
ン・ファースト(教育を第一に)」

女子教育を否定するパキスタンタリバン運動に襲撃されながらも、
奇跡的な回復をしたマララ・ユスフザイさんが、2013年に国連本部で
行ったスピーチの一部だ。

マララさんはアメリカでオバマ大統領(当時)と会談した際に、ドローン
を使用した対テロ戦争を止めるよう求めた。

ノーベル平和賞を受賞したマララさんと同じ、パキスタンで生まれ育ち、
対テロ戦争の犠牲になり、アメリカで被害を訴えた少女がいた。

ナビラ・レフマンさんだ。マララさんの国連での演説には多くの人々が
集まったのに、ナビラさんの話に耳を傾けるアメリカ下院議員はほと
んどいなかった。

なぜなら、ナビラさんと家族を襲ったのは、イスラム過激派ではなく
アメリカ・CIAが運用する無人殺人機ドローンだったからだ。

本書は2015年にドローン被害と教育の必要性を訴える為に来日した
ナビラさんの話を中心に、イスラム教のこと、中東の情勢、テロ戦争
がなぜ起きて継続しているのか等を、小学校高学年向けに書かれ
たノンフィクションだ。

本当に申し訳なく思う。日本に来ているのに、私はナビラさんのニュー
スを完全に見逃していた。マララさんの国連演説などはきちんと見て
いたのに。

インターネットどころか、テレビさえもないパキスタンの部族支配地域
で、豊かとはいえない暮らしをしているところに突然、ドローンから爆撃
される。その場に居合わせたナビラさんも、彼女のお兄さんも、そして
ナビラさんから30メールしか離れていない菜園でオクラを摘んでいた
おばあさんも、テロリストではない。それなに、ドローンの攻撃を受けた。

おばあさんは亡くなり、ナビラさんも怪我を負った。でも、誰も何もして
くれない。パキスタン政府は「アメリカの責任だ」と言い、アメリカは誤爆
の事実を認めない。

アメリカの敵であるイスラム過激派に襲撃されたマララさんへの対応と、
なんという違いだろう。加害者が誰なのか?アメリカの敵か、アメリカ自
身かで被害者のその後の環境は真逆の位置になってしまう。

ナビラさんもマララさんも、自分たちにまったく関係ないところで始まった
対テロ戦争の犠牲者なのにね。アメリカが行っているドローン攻撃で、
ナビラさんのように犠牲になった人たちはたくさんいるんだよね。

「なぜ戦争をするのですか?なぜ教育のことを考えないのですか?
なぜたくさんのお金を戦争に使って、教育に使わないのですか?
戦争で何が解決できるのですか?」

ナビラさんの心の叫びだろう。でも、きっとアメリカでは中東やアジアの
人々の命は軽いのだろうと思う。2004年生まれの少女に与えた恐怖に、
誰も真剣に取り合おうとしないのだから。

児童書なので分かりやすく書かれており、これまで一般向けの中東問
題を扱った作品を読んでもいまひとつ理解しにくかった部分も補える。

小学生だけではなく、多くの人に読んで考えて欲しいと思った。そして、
イスラエルとドローンの共同開発をしようとしている我が国を、心より
申し訳ないと思う。

そのドローンがパレスチナで使われない保証はないのだもの。