俺はドナルド・トランプをやっている

韓国、大変なことになってるなぁ。なんで政府高官の首切りで済まそう
としているんだろうか。

大統領在任中は起訴されないとはいえ、これはヒラリー・クリントン
メール問題以上に問題じゃないんだろうか。

近年の韓国大統領って問題のない人がいないよな。

『トランプ』(ワシントン・ポスト取材班/マイケル・クラニッシュ/マーク・
フィッシャー 文藝春秋)読了。

アメリカ人のみならず、立候補表明時には誰もが泡沫候補だと思った
ことだろう。立候補した本人以外は。

ドナルド・トランプである。アメリカ人の大富豪は、並み居る共和党候補者
を次々と撤退に追い込み、民主党ヒラリー・クリントンアメリカ大統領
というVIP中のVIPの座を目指している。

私にしては珍しく旬の読書なのである。だって、大統領選前に何故、彼が
多くの批判を受けるのと同じくらいに、多くの支持を得ているのかを知り
たかったのだもの。

しかも、調査報道は得意中の得意の「ワシントン・ポスト」取材班。これは
読み逃すわけにはいかないでしょう。トランプ自身も取材班のインタビュー
に応えているっていうしさ。

先般、ヒラリー・クリントンとのテレビ討論会で司会者から「選挙の結果を
受け入れるか」と問われて、頑なに「自分が買った場合は受け入れる」と
繰り返していた姿こそ、本書でもトランプ自身が言っている「ドナルド・
トランプは負けたことがない」との現れなんだ。

でも、実際はいっぱい負けているんだけどね。憧れのニューヨークのプラザ
ホテルを買収したはいいが結局は手放す羽目になっているし、手掛けた
カジノは倒産している。自分のことが書かれた記事が気に入らないから
と高額の賠償請求訴訟を起こしても判事に却下されてるし。

でも、本人にしたら「負け」ではないらしい。誰かに似ていると思って考えた
ら、子ブッシュ政権時代の国防長官ラムズフェルドだった。ラムズフェルド
の自伝の感想に「究極のポジティブシンキング」と書いたけれど、トランプ
もまさしくそれ。

あ、偶然にもラムズフェルドファーストネームも「ドナルド」だったわ。
ラムズフェルドは戦争屋だったけれど、トランプはアジテーターであり、
ショーマンである。

選挙戦では一貫して「ブルーカラーに共感する大富豪」として、国民の
不満のはけ口になるような言葉を連発し共感を呼んでいるものね。
大衆が何を求めているのか。それを嗅ぎ付ける嗅覚は非常に鋭いの
ではないかと思うわ。

しかも、既存の政治家が使う分かり難い言葉ではなく、感情に直接訴え
る分かりやすい言葉ばかりなんだよね。だから、他の候補者の誰よりも
一般の支持を得たのだろうな。

「俺はドナルド・トランプをやっている」

本人にとっては「ドナルド・トランプ」自身が既にブランドなのである。だから、
メディアを批判しながらもメディアに出続け、詐欺まがいの行為と恫喝で
イメージを守り抜く。

実際、トランプの純資産がどれくらいあるのかは不明だそうだ。本人のその
時々の「感覚」で資産額が変動するらしい。純資産は本当のところ、どれ
くらいあるんだろうな。

アメリカは選挙を注視して私を大統領にするべきだ」なんて発言もあった
けれど、もし、まかり間違ってトランプが大統領になったら大統領専用機で
あるエアフォース・ワンの尾翼に「T」とか書いちゃうんじゃないのか。ホワ
イトハウスは「トランプハウス」に名称変更して、挙句には国名まで「ユナ
イテッド・ステイツ・オブ・アメリカ」から「ユナイテッド・ステイツ・オブ・トラ
ンプ」にして国からライセンス料を踏んだくろうとするかもしれん。

アメリカ大統領候補を様々な方面から描いた優れた評伝である。この膨大
な仕事を僅か3か月で仕上げた「ワシントン・ポスト」取材班に敬意を。

そして、間近に迫った大統領選挙の結果が楽しみである。トランプが負け
たらきっと「不正選挙だ」ってまたひと騒動なんだろうけれどね。