死することで自身を完成させたのか

民進党蓮舫代表の国籍問題に関して、自民党側からの「説明責任を
果たせ」との攻撃が止まらない。

それ、そのまま甘利センセイにお返ししたいんだけど。もう睡眠障害
治ったんだよね?あと、パンツ高木センセイにもパンツ泥棒問題を
説明して欲しいんだけどね。

『激しき雪 最後の国士・野村秋介』(山平重樹 幻冬舎)読了。

「え、なんで?」。頭の中は疑問だらけだった。ニュースが伝えていた
のは右翼民族派のリーダーであり、圧倒的なカリスマであった野村
秋介の死だった。

ノンポリなので彼の思想・信条に共感していたのではなく、真剣な話を
している時の鋭い眼光とチャーミングな笑顔とのギャップ、しっかりと
した語り口、教養の広さで興味深い人物だった。

その野村秋介が死んだ。しかも、朝日新聞社の役員応接室で自らに
拳銃の銃弾を3発撃ち込んでの自決である。どうしてこのような死に方
をしたのだろうかと疑問しかなかった。

野村秋介の最後の10年間に密な関係を築いた著者が、野村の自決を
軸に彼を取り巻いた人々との関係から「野村秋介」という稀代の人物を
描き出している。

本書に描かれた野村秋介像はとことん格好いい。感激屋で、涙もろく、
筋はきちんろと遠し、与党政治家だろうが経済界の重鎮だろうか「巨悪」
だと感じれば容赦しない。

だから、河野一郎邸焼き討ち事件や経団連襲撃事件を起こしたのだろう
し、山藤章二の風刺イラストを巡って最後まで朝日新聞とやりあっていた
のだろう。

ただ、著者が野村秋介に近しい人物だっただけに少々割り引いて読んだ
方がいいのかもしれない。でも、確かに魅力的な人物ではあるんだよね。

思想・信条を同じくする者だけはなく、野村の交友関係は本当に幅広い。
政治家、ヤクザ、芸能人、映画関係者は勿論のこと、左翼文化人と呼ば
れる人たちでさえ、何か感じるものがあれば左右の垣根を越えて親交を
結んでいる。

右にしても、左にしても、今、野村秋介ほどの懐の深い人物がいるだろう
かと思う。同じ方向を向いた者同士で閉じちゃっているんじゃないかな。

残念ならがら本書を読んでも私の疑問に対する答えはなかった。描かれ
たご本人が亡くなっているので、野村の内面を描いた部分は著者の想像
なのだろうしね。

野村秋介同様、興味深かったのは彼の父上・野村三郎である。油圧シリ
ンダーの優良企業である株式会社南部の創業者。技術者としての三郎
氏の人生も波乱万丈である。この人だけでも本が1冊書けるんじゃないか
と思ったわ。

明治男の三郎氏、野村が生涯「親父を越えられなかった」と言っている
のだが、どうしてどうして。歩んだ道は違ったが、この親にしてこの子あり
という感じだった。

野村秋介の死に際し、よく引き合いに出されるのは三島由紀夫だ。三島
が市ヶ谷で割腹自殺を決行することで自身のナルシシズムを完成させた
ように、野村秋介は拳銃自決をすることで自身を「野村秋介」たらしめた
のだろうと思うことにした。

尚、本書のタイトルは「俺に是非を説くな。激しき雪が好き」との野村の
苦の一部である。