「神の眼を持つひと」は地球を愛している

オリンピック・イヤーになる2020年は神宮球場の使用を中止して
くれないだろうか。

オリンピック組織委員会がこんなことを言いだした。神宮球場
言えばヤクルト・スワローズの本拠地。六大学野球の会場もここ。

当然、補償金が発生するんだけど、これって当初予算と別会計
だよね。またオリンピック予算が膨らむってことでいいんでしょうか。

…どこまで金かけりゃ気が済むんだよ。

『わたしの土地から大地へ』(セバスチャン・サルガド/イナザベル・
フランク 河出書房新社)読了。

初めて見た時の衝撃は忘れられない。白と黒のコントラストが強烈
な印象を残した。絵画のようだが、写真に間違いはない。美しく、
訴えかける大きな力を持った写真。

写真家の名前はセバスチャン・サルガド。「神の眼を持つひと」とも
呼ばれる彼の写真は、人間は勿論、植物、動物、風景とこの地球上
のあらゆるモノを捉える。

本書はサルガドへのロング・インタビューをまとめた作品だ。彼が歩ん
で来た半生は勿論、写真に対して、地球に対しての考え方が語られて
いる。

生まれ育ったのはブラジル。しかし、政治的な活動が原因となって
フランスへ亡命。経済学を学んでその道に進むはずだったが、国際
機関で働いたことをきっかけに写真の道へと入る。

アフリカの飢餓、難民キャンプ、ルワンダ虐殺。撮られる側が過酷で
あるだけではない。撮る側のサルガドにも大きな精神的負担があった。

人間も、動物も、植物も、この地球上で連帯している存在なのだと
言う。それは神のような存在が作ったものではなく、それぞれが必要
に応じて進化した姿なのだと。

サルガドがガラパゴスを訪れた際に出会ったイグアナ。その足をよく
よく見てみると、なんと人間の手に似ていることか。このイグアナの
写真は何度もみたけれど、本当に似てるんだよね。人間の手に。

戦乱の地へ、アマゾン奥地のインディオの部族のところへ、南極や
北極へ。サルガドは地球のあらゆるとこへ出かけて、カメラを構え
る。そして、プリントされたそれは見る者の心を捉えて離さない。

尚、サルガドは父から受け継いだ故郷・ブラジルの土地の再生も
手掛けている。荒れ果てた土地に植林をし、環境の復元を目指し
たプロジェクトは成功しているという。

話し言葉を生かそうとした翻訳なのだろうが、若干、読み難いのが
難点だが自然を撮影した作品の雄大さと重なるようなサルガドの
人柄が伝わって来る。

でもね、写真家についてはその作品を見るのが一番いいのかもな。
我が家には洋書も含めてサルガドの写真集が数冊あるが、見るの
に時間がかかるんだよな。見とれちゃって。