地上45cmの世界でたくましく生きる

昨夜も国会前で戦争法案に反対するデモが行われた。警察発表で
4万5千人だったとか。

そのデモの人波を取り囲む警察車両がアイドリングしたままで、排気ガス
をまき散らし、デモ参加者のなかには気分が悪くなった人がいたとか。

環境に優しくないぞ、警視庁。「アイドリング、ストップ!」って看板を見た
ことないかね?

まぁ、警視庁の規制が厳しくなればなるほど、安倍政権の危機感が
高まっている証拠なんだろうけどね。

そういえばあれだけ高飛車だった高村センセイもトーンダウンしてたな。
どうしたのかね、あの強気は。あなたの態度と言動は、忘れないよ。

『アニマル・ピープル』(インドラ・シンハ 早川書房)読了。

インド・マッディヤプラデーシュ州の州都ボーパール。害虫対策とスラム
街の雇用問題の解決の為、アメリカ資本の殺虫剤工場が建設された。

1984年12月2日から12月3日の深夜にかけて、史上最悪のプラント事故
が発生する。工場から流れ出した有毒ガスは人々を襲い、被害を被った
のは15万人とも30万人とも言われる。

このボーパールを「カウフプール」と言う架空の町に置き換えて、事故で
後遺症を負った青年を主人公とした小説が本書だ。

両親のことは知らない。発見された時、彼は毛布にくるまれた赤ん坊で
あった彼は、成長する過程で腰が曲がり、二本足で歩くことが出来なく
なった。

「おれはかつて人間だった」。手足を使って歩き、走る自分を彼は「動物」
と称する。そして、「動物」の生い立ちを聞こうと訪れたオーストラリア人
ジャーナリストの求めに応じ、「動物」はジャーナリストが残して行った
テープに自身の生い立ちを吹き込む。

「動物」が語った内容を忠実にテープ起こしをした内容を掲載する。そんな
体裁を取った小説である。

スラムで生まれ育った「動物」の使う言葉は下品だ。下品だが、そこに
したたかさと強さが秘められている。時にシニカルに、時にユーモラスに。
スラムで生きる仲間たち、自分の用紙に関する悩みが語られる。

現実に起こったプラント事故は深刻な問題を抱えている。だから本書も
シリアスかと言えばそれだけではない。

両親はなく、フランス語しか解さない老修道女に育てられ、体は変形
し、健康体の人々とは目線も違う。これだけを書き連ねたなら、不幸の
どん底なのだが、そんな環境・境遇にいても「動物」はその名の通りに
たくましく生きている。

「動物」のたくましさとしたたかさが、かえって原因企業の狡猾さを
浮き彫りにしているんだな。全体的にエネルギッシュな作品である。

尚、実在する方のボーパールでは現在でも汚染物質が放置され、
原因企業であるユニオン・カーバイトから業務を引き継いだダウ・
ケミカルは被害者たちへの補償に応じていない。