現場にいた者にしか書けない情景

関東から東北にかけて大雨で甚大な被害が出ている。亡くなった方・
行方不明の方も出ている。

安倍晋三は今日、鬼怒川が決壊した茨城県常総市を視察した。でも、
誤魔化されないよ。決壊した時、緊急に災害対策の会議は20分足らず。
その前後では戦争法案と消費税引き上げの会議にそれぞれ1時間以上の
時間を掛けているよね。

そして、避難していた人たちが不安な夜を齟齬していた時には右翼系の
インターネット番組に出演ですよ。

「国民の生命と財産を守る」為の戦争法案の方が大事なのか。そうなの
か。

これが安倍政権の危機管理である。

『目撃 アメリカ崩壊』(青木冨貴子 文春新書)読了。

アメリ同時多発テロから今年で14年となる。これだけの時間が経っても、
あの日の夜にテレビを通じて目にした映像は鮮明に覚えている。

旅客機が突っ込んだ世界貿易センターのふたつのビルが煙を上げ、
そのうちに崩壊して行った。

著者の青木冨貴子氏は、夫で作家のピート・ハミルと共に世界貿易
センターから数百メートル離れたアパートで暮らしていた。

2001年9月11日の朝、アパートに車でも突っ込んだのかと思うくらい
の大きな音で著者は目が覚める。外出先からアパートに戻った夫・
ピートが玄関先で叫ぶ。「ワールドトレードセンターにジェット機
ぶつかった!」。

それは2機目の旅客機が南タワーに突入した音だった。

ピート・ハミルと共に現場に駆け付けた著者は見た。タワーから落ちる
人と、南タワーの崩壊を。

グランド・ゼロ同時多発テロ後にそう呼ばれることになったテロの現場
の間近から、事件発生からの1週間をレポートした本書は現場に近い
場所だけに臨場感に溢れている。

同じアパートに住み、世界貿易センターに職場を持ち、そこからどう
にか逃れられたビジネスマン。近くの小学校で子供を遊ばせていた
母親等。それぞれの「その時」の証言も収められている。

自宅で報道を見ながらふたつのタワーに取り残された人たちを心配
する著者。その一方で子ブッシュ大統領に対する目はかなり辛辣だ。
「誰かが書いた原稿を棒読みしている」なんて、きっついわぁ。

初めてのアメリカ本土へのテロ攻撃は、アメリカを「それ以前」のアメリ
とは別の国にした。あのテロ事件以前もアメリカは世界の警察だった
けれど、世界唯一の大国は世界で一番、テロに脅える国になった。

アメリ同時多発テロに関しては関連書籍がいくつもあるが、現場を知る
者にしか書けない事件後の日々の情景が描かれている良書だ。