読むことで反原発を主張した歌人

お金の問題で幹部が逮捕された国際サッカー協会。その会長が
臨時総会の後で開いた会見に乱入した男が模造の札束をばら
撒いたとか。

金権体質に対する抗議なのだろうね。そういえば先日行われた
サッカー女子ワールドカップの表彰式に姿を見せたFIFA幹部は
観客のブーイングで迎えられてたな。

さて、この体質、変えられるでしょうか。

『歌集 青白き光』(佐藤祐禎 いりの舎文庫)読了。

その人は2013年3月12日、避難先の福島県いわき市で亡くなった。
福島第一原子力発電所が立地する大熊町で、農業の傍ら短歌を
詠み続けた人。

それが本書の著者である佐藤祐禎氏だ。

本書には昭和58年から平成14年までに詠んだ短歌のかなから
厳選された作品が収録されている。

いつ爆ぜむ青白き光を深く秘め原子炉六基の白亜列なる
原発に勤むる一人また逝きぬ病名今度も不明なるまま

原発立地自治体にあって、反原発を歌に詠んだ歌人は、エネルギー
政策と同様にコロコロと変わる日本の農政にも振り回された。

ただ、反抗の歌ばかりではない。大熊町の農のある風景を、
旅先での想いを、父母や妻・子供たち家族への想いを詠んだ
歌も多くある。

特に生まれ故郷を詠んだ歌は、原発事故後の今読むと「この風景が
失われてしまったのか」と切ない。

そして、原発を詠んだ歌のなかには首都圏に住まう私には胸をえぐら
るような作品もある。

原発が安全ならば都会地になぜ作らぬとわれら言ひたき
わが町は稲あり魚あり果樹多し雪は降らねどああ原発がある
原発持つ町の哀れを君知らず「電気どうする」とたはやすく言ふ
地元では使へぬ九百万キロワット山越え遠く首都圏へ行く

福島第一原子力発電所の事故が起こって、私たちはやっと原発
危険性を身近に感じた。それでは遅かったのだ。

原発の歌だけは私の心の叫びだ」と言う佐藤祐禎氏。農政に翻弄
されながらも農業に従事した大熊町に帰ることもなく亡くなった。

原発歌人の、ご冥福を祈る。

農などは継がずともよし原発事故続くこの町去れと子に言ふ