テロとの闘いはメビウスの輪

そろそろ夕飯の支度をしようかな…と思っていたらインターフォン
鳴った。こんな時間に誰だろう。

妹と一番上の姪だった。来年、成人式を迎える姪の写真撮影をして
来たとか。着物姿を実家の母に見せようと立ち寄ったらしいが、
生憎と母は仕事から帰宅しておらず我が家に寄ったらしい。

自分の姪ながら綺麗だったわぁ。この子が来年には20歳だもの。
私も歳を取るはずだわ。汗。

アメリカの秘密戦争 9.11からアブグレイブへの道』
セイモア・ハーシュ 日本経済新聞社)読了。

全裸の人間ピラミッド。その前で笑顔を見せるアメリカ兵。
イラクアブグレイブ刑務所での捕虜虐待のニュースは
世界に衝撃を与えた。

このスクープを放ったのが本書の著者であるセイモア・ハーシュ
ヴェトナム戦争当時、アメリカ兵によるソンミ村虐殺事件
スクープした調査報道記者である。

その著者が、9.11アメリ同時多発テロ以降の子ブッシュ政権
が「テロとの闘い」との錦の御旗を掲げて行って来たでたらめ
を検証している。

ベテラン記者である著者ならではの人脈なのだろう。アメリカの
情報機関、外交官、退役・現役の軍人等、幅広い人たちの証言
を積み重ねての描写は圧巻だ。

CAIもFBIも情報機関としての機能を果たせず、海外の情報機関
から送られて来た情報を頼りにしたことで「イラクは大量破壊
兵器を保有している」なんて偽情報をイラク戦争の拠り所に
するはめになった。

そもそもアメリカは中東をきちんと理解していないのではない
だろうか。原理主義者と、その原理主義者に異を唱えるイスラム
教徒の区別さえも出来ていないのではないだろうか。

アメリカがテロリストたちの情報を集めるなかで、当時のシリア
がかなり積極的にアルカイダの情報をアメリカに提供しようと
していたことを本書で知った。

この時、シリアはアメリカへ歩み寄ろうとしたのではないのか。
それをアメリカが信じていれば現在のシリア情勢も多少違って
いたかもしれない。

そしてやっぱり不思議な国はパキスタンだ。この国、アメリカに
協力はするけどタリバンも支援しているんだよな。まぁ、ソ連
アフガン侵攻の際にはアメリカもタリバンを支援したんだけど。

ある国の体制を自分たちの都合のいいように変えようとする。
それが子ブッシュアメリカがやって来たことだ。その結果、
どうなったか。

タリバンは悪い奴だったけれど、治安はよかった」。アフガニ
スタンの人の言葉だが、アフガンも、イラクも、アメリカが当時の
政権を倒してから治安は以前よりも良くなったとは言えない。

だが、「その後」についてアメリカが責任を負うこともない。
彼らは敵を倒したら、次の敵を見つけるだけだ。いつまで
続ける気なんだろうね、こんなことを。

尚、アブグレイブを始め、アメリカの捕虜収容所で行われていた
虐待については国防総省上層部も知っていたはずなのに、罪に
問われたのは末端の軍人だけだ。

2011年5月2日、9.11アメリ同時多発テロの首謀者とされる
ウサマ・ビン・ラディンアメリカの特殊部隊によって暗殺
された(アメリカの修正憲法は暗殺を禁止している)。だが、
アメリカは今でもテロに脅えている。