ホロコーストへの道

3連休初日だというのに、お天気が不安定。飛び石出勤の私には
あまり関係がないんだけど。

でも、子供たちの夏休み最初の週末がこんなお天気だと気の毒
だよね。

雨が降るのなら、せめてしとしとと降る情緒のある降り方だと
いいのだけれど。

『水晶の夜 ナチ第三帝国におけるユダヤ人迫害』(H.J.デッシャー
人文書院)読了。

砕けたガラスが輝くさまは美しい。だが、それが暴動のあとと
なると話は別だ。

1938年11月9日夜から10日未明にかけて、ドイツ各地で
ユダヤ人の商店や住宅、シナゴーグが襲撃される事件が
起こった。

クリスタル・ナハト。水晶の夜とのどことなくロマンチックな
呼称とは裏腹に、この事件はナチス政権下でのユダヤ
差別の大転換点となった。

本書はドイツがまだ東西に分裂していた頃、両ドイツの公文書
から資料を探し出し、この暴動が民衆の自発的な行動の結果
だったかのか、官制暴動だったのかを検証する。

ホロコーストナチスに関しての出版物は多いが、水晶の夜に
関しては日本で手に入る作品が少ないんだよね。探しまくって
本書に行き当たったのだが、資料の寄せ集めの感は否めない。

それでも、事件のきっかけとなったフランスのドイツ大使館員
暗殺に関しては犯人であるポーランドユダヤ人の青年との
同性愛関係の疑いは非常に濃厚だ。

暗殺されたひとりのアーリア人の命と引き換えに、多くのユダヤ
人がその報いを受けるなんて考えは狂っているとしか言えない。

しかも、政権内部で行われた会議の資料からは、これをきっかけ
に国内のユダヤ人から何もかも奪おうとする権力者たちの姿が
垣間見られる。

自発的暴動か、官制暴動か。著者は一切の判断を下しては
いないが、官制暴動の疑いが強い。狂信者たちが国を治める
と何が起こるのか。ぞっとする。

ただ、それは為政者だけではなく市井の人々にも言えること
なんだよね。何かしらのきっかけがあれば、日ごろの不満や
ストレスのはけ口として攻撃衝動が爆発する。

それは近年の日本で、頭のねじがちょっとおかしい人たちが
行っているヘイトスピーチにも当てはまるんじゃないかと思う。