虚構と現実がシンクロする時

またもや夕方6時から安倍晋三の戯言を聞く。これ、以前の会見と
なんら内容に変化がないじゃん。言ってることは一緒なんだよな。

在留邦人を乗せたアメリカの艦船がなんちゃらかんちゃらっての
を前提にしているけどさ、アメリカは本当に日本人を救出して
くれるんですか?当然、該当地域にいるアメリカ人優先じゃない
のかね?

状況は違うけどさ、ヴェトナム戦争から敗走する時、アメリカは
協力してくれたヴェトナム人を見捨てたんたぞ。

「私は思います。だから、いろいろ変えちゃいます」の安倍晋三
追随した公明党は、「平和の党」の看板を外せ。

『映画の奈落 北陸代理戦争事件』(伊藤彰彦 国書刊行会
読了。

サンマの丸干しを焼こうと思った。だが、長くてグリルに入らない。
包丁を握りしめ、呟く。

「タマ、取ったる」

ポンッと頭を落としたところで、背後で旦那の声がする。
「またヤクザの本を読んでるでしょう」

正確にはヤクザとヤクザ映画の本だけどね。

映画「仁義なき戦い」は東映の大ヒットシリーズだった。元ネタは
本物の極道・美能幸三の獄中手記だと言われる。監督は深作
欣二、脚本は笠原和夫

能美幸三の協力で過去の抗争を脚色した人気シリーズは、
東映の屋台骨を支えた。

その東映実録ヤクザ映画の最後を飾ったのが本書で取り上げられ
ている「北陸代理戦争」だ。

福井市に地盤を持つ川内組組長・川内弘をモデルとして、松方
弘樹が主演を演じた。

この映画の制作過程で、共に超えたい相手を持ったふたりが
出会った。脚本家の高田宏治は、「仁義なき戦い」シリーズを
担当した笠原和夫を超えたかった。

そして、モデルとなった川内組長は、盃を受けた菅野組組長・
菅野政雄の肩を飛び越え、山口組三代目・田岡組長から直
に盃を受けることを望んでいた。

この出会いが、のちの悲劇を引き起こすことになるとは…。

春日太一『あかんやつら 東映京都撮影所血風録』も内容が
濃かったが、本書も負けないくらいに濃厚な内容だ。

裏社会の人々と映画界は切っても切れない時代だったこと
もあるが、次から次へと極道さんたちが出て来る。勿論、
川内組長が語る自慢話(?)にも唖然。

シナリオを綿密に研究し、初稿と決定稿の違いや削除された
部分をも掲載しているのは著者もまた脚本家であるからか。

かねてより関係がこじれていた菅谷組長と川内組長だったが、
映画のクランクインの日に川内組長は破門されている。

そうして、公開後。川内組長暗殺事件が起きる。それは映画の
中で松方弘樹演じる川田が行きつけの喫茶店で襲撃された
シチュエーションそのままに再現されたような事件だった。

仁義なき戦い」にもモデルはいた。実際にあった抗争を脚色
して、映画を作っていた。「北陸代理戦争」も何ら変わらない。
モデルがいて、実際の抗争を脚色している。

ただ、ひとつ違ったのは「仁義なき戦い」は過去の抗争を描い
ていたのに対し、「北陸代理戦争」は現在進行形の抗争を
描いてしまったところだった。

作品完成後、川内組の構成員の中にも東映の関係者の
なかにも内容を危惧する者がいた。しかし、党の川内組長
はご満悦だったようだ。

「生きている人、生きている事件をネタにするのはこわい。
しかし、奈落に墜ちる覚悟でつくらなければ、観客はついて
来えへん、見物がのぞきたがるような奈落に突き進み、それ
をすくいとって見せなければ映画は当たらへん、奈落の淵に
足をかけた映画だけが現実社会の常識や道義を吹っ飛ばす
んや」

脚本を担当した高田の言葉だ。映画の公開が、川内組長を
奈落へ向かわせたのか。元々、抗争はあった。その火種を
煽ってしまったのか。

川内組関係者にも話を聞いているのだが、今でも福井では
「北陸代理戦争」の話はご法度らしい。それでも、こまめに
関係者を探し回って取材をした著者に感謝。

映画は観ていたけれど、その後の事件を知らなかったもの。
虚構と現実が、シンクロしたんだな。結末は人の死だった
けれど。

もしかしたら、映画そのものより本書の方が面白いかも〜。