共に生き、共に夢見た時があった

祝!ジャンプ・ラージヒル個人、葛西紀明選手、銀メダル!

さて、ソチが熱い。熱戦もそうなんだけれど、現地へ行っている
我が旦那(私を差し置いてアイスホッケーを見に行っている)からの
メールによると、気温が高いらしい。

それはね、日本から松岡修造が行っているからだよ。だって、日本を
代表する「熱い男」だもの。

修造、早く日本に帰って来てっ!競技場と選手の為に。

『一瞬の夏 下』(沢木耕太郎 新潮文庫)読了。

再起第一戦を勝利で飾り、続く第二戦にもKO勝ちをおさめた
カシアス内藤。そして、次に狙うは東洋ミドル級チャンピオンで
ある柳済斗との試合だ。

それは、内藤が望んだ「オトシマエ」だった。「クレイになれな
かった男」で敗れた相手ともう一度闘いたい。その思いが、
内藤をトレーニングに駆り立てた。

しかし、事は順調には運ばない。韓国のプロモーターとの
交渉、契約に際しての駆け引き。ルポライターであるはず
の著者は、いつの間にか内藤の為に、試合のマッチメイク
に奔走する。

度重なる試合の延期と、難航する契約。その中で、1年を
かけて作り上げて来た内藤の肉体と生活に変化が現れ、
同じ夢に向かって走っていたはずの人々の間には徐々に
亀裂が入って行く。

1979年8月22日、韓国・ソウル。この日の為に疾走して来た。
運命の日。分かっていて、読めなかった。最後の50ページ
弱が、どうしても読めなくて丸1日、本を開くことが出来な
かった。

小説なら大団円で終わっているのだろう。だが、これは現実
に起こった話だ。夢は、ソウルの夏の夜にあっけなく散った。

「リングに上がって……初めて、足が震えなかったのに……
生まれて初めて、怖くなかったのに……」

生来の気の優しさから臆病とも評されることもあった内藤が、
持てる力を掛けた時は終わった。

そこへ辿り着くまでには、同じ時に、同じ夢に向かって、走り
続けた男たちがいた。

物悲しい結末だが、最終章の「リア」で救われる。一瞬の夏
に、夢は終わった。だが、夢の終わりから、また違う夢が
始まるのだ。