「平成の鬼平」、誕生す

新聞を見ていたかと思うとテレビの前に。テレビの前にいたかと思うと
玄関で靴選び。下駄箱を覗いていたかと思うと冷蔵庫を物色。

我が家の白クマは歯磨きをしながら家の中を動き回る。困るんだよねぇ。
歩き回った通りに歯磨き粉の跡がポタポタ落ちてるんだから。

何度言っても直らないこの癖。この際、雑巾スリッパでも履いてもらおう
か。ブツブツ…。

中坊公平・私の事件簿』(中坊公平 集英社新書)読了。

今年5月3日、「平成の鬼平」と呼ばれた弁護士・中坊公平氏が亡くなった。
いつか読もうと思って積んでおいた本書を取り出して、遅ればせながら
追悼読書である。

中坊氏が手掛けた事件を辿りながら、弁護士としてどのように成長して
来たかが綴られている。

取り上げられている14の事件は新書という限られたページ数の為に
ダイジェストになっている。氏の仕事については他の作品の方が
参考になるかもしれない。

しかし、本書に収録された森永ヒ素ミルク事件の冒頭陳述は必読。
氏は終生忘れることの出来ない冒頭陳述とし、時が経っても暗記
していると言う。

後の公害訴訟でもそうだったが、国と企業が癒着して多くの犠牲者を
出した事件だけに、被害者である弱者の目線にたった冒頭陳述は
権力側への怒りを秘めながら、声を上げられなかった弱者の声を
見事に代弁している。

弁護士は依頼者に法律のことを教える存在ではない。依頼者の立場
になり、依頼者の心の負担をいかに減らすかなのだと言う。

司法の責任とは何か。弁護士とはどうあるべきか。中坊氏の人生観
に触れられる書である。晩年、整理回収機構で汚点がついてしまった
のが残念だった。