危機に直面した自治体の長として

ふふ〜ん、春のダイヤ改正か。駅の改札近くに携帯用時刻表があった
ので、一枚もらった。いつも利用している早朝の電車は、1分だけ早い
発車になるのか。

ん?待てよ。が〜〜〜ん、行き先が変わっているじゃんっ!日比谷線
直通中目黒行きだったのが、浅草行きに変更かよっ!

どうしよう。ターミナル駅で乗り換えは面倒だぞ。同じ時間に発車るす
半蔵門線直通に変更するか?あぁ、どうしよう。

放射能を背負って 南相馬市長・桜井勝延と市民の選択』(山岡淳一郎
 朝日新聞出版)読了。

全交流電源喪失、原子炉の冷却機能の停止。東京電力福島第一原発
事故で外部放出された放射性物質は、政府が線引きした同心円のよう
には拡散しなかった。

それでも日本政府は同心円での避難区分に拘った。南相馬市
10kim圏、20km圏、30km圏に分断される。そして、地震津波
生き延びた人たちを苦しめた「屋内退避」の指示。

水が、食糧が、燃料が届かない。政府は屋内退避を指示するだけで、
物流のことまでは考えられなかったのか。まるで兵糧攻めだ。このま
までは市内に残っている住民の生活が立ちいかなくなる。

国に、圏に、窮状を訴えて状況は好転しない。市長は勧められる
まま、ビデオ・メッセージを発信する。動画投稿サイトに掲載され
たメッセージは、英訳が付けられ世界中で視聴された。

その桜井市長の半生と、あの大震災と原発事故、放射能汚染への
対応、その後の住民との対話等、1年間の動きを追ったのが本書。

「謝ってくれなくていいんです。すべての責任を取ってもらいます」

謝罪に訪れた東京電力幹部に、凝縮した怒りをぶつける市長の
言葉を読んでいて、思い出したことがある。当時の東電会長が
「謝罪と責任は別」と言っていたことを。

原発事故で真っ先に逃げ出した大手メディアを痛烈に批判する
姿には溜飲が下がる。尚、相馬野馬追い等の南相馬の歴史も
勉強になる。

本書は全体を通して見ると散漫な印象を受けるが、日本にこんな
市長がいるのかと感銘を受ける。課題山積の復興だが、今後も
被災地の状況を忘れずに確認して行きたい。