パワー・スポットって今でもブームなんだろうか。わたしゃ好きじゃない
のだが。

その場所へ行ったからって力がつくってもんじゃないだろうに。要は
小麦粉を固めたものでも薬と思って飲んだら効果があるってのと
同じでしょ。気持ちの問題じゃないのかなぁ。

「あそこがいい、ここがいい」なんてやっているのを聞くと、「どうせ
なら京都に住めば?」と言いたくなる。

怨霊と共に1000年を過ごして来た古都だもの。すっごいパワーが
もらえると思うぞ。

『浅草芸人 エノケン、ロッパ、欽ちゃん、たけし、浅草演芸150年史』
(中山涙 マイナビ新書)読了。

東京スカイツリーの開業を間近に控えて、周辺の東京下町関連の
ムックや書籍が多く出版されるようになった。新刊書店にも特設
コーナーが設けられている。

荷風散人を真似して墨東歩きをしていた身としては見逃せない
コーナーで見つけたのが本書である。

東京一の繁華街として名を馳せた浅草も寂れて久しい。今では
外国人観光客の定番スポットという地位を保ってはいるが、かつて
の輝きは失った。

そんな浅草は芸能の街であり、あまたの喜劇人・芸人を世に送り
出した。本書が取り上げるのが芸能の街・浅草で才能を開花させ
た芸人たちの群像だ。

なのだが…いかんせん、対象が広すぎる。「浅草芸人」と言うより、
「日本の芸能150年ダイジェスト」になってしまっている。

著者のお笑いや芸人に対する思い入れは分かるのだが、的が
絞れていない。不勉強で著者の経歴をよく知らぬのだが、プロの
物書きにしては言葉の使い方がおかしい個所もいくつかあるのも
気になる。

芸人たちの栄枯盛衰は参考になるのだが、そこからは「浅草」と
いう街の姿が一向に見えて来ないのが残念だ。

それぞれに個性の強い人々なので、こうしてにわか作り(失礼)の
新書にまとめてしまうのはもったいない。

「浅草」の文字に惹かれて読んだので期待外れだったのかもしれ
ない。これから芸人や芸能ことを知ろうと思った人にはいいかも。

それでも小林信彦『日本の喜劇人』と比べてしまうのは、小林氏の
著者の方が心に強く残ったからだろうな。