機能不全の全貌

すべての悪は喫煙にある。そんな喫煙ファッショの昨今、喫煙者は
非常に肩身が狭い。あっちもこっちも禁煙。外食するにも大変だ。

そんななか、とんでもないことを言いだした人がいる。中部大学とか
いう大学の武田某なる教授である。

煙草を吸う人は吸わない人に比べて肺がんの発生が10分の1に
抑えられるのだそうだ。

おいおい…。いくらなんでもそりゃないだろう。なんでもかんでも喫煙の
せいにする昨今の風潮には苦々しいものがあるけれど、この人の言う
ことを信用する喫煙者はいないと思うぞ。

地球温暖化が話題になれば食い付き、福島第一原発の事故が起これば
放射能について語り出す。そして今度は喫煙だ。世の流行り廃りを上手に
メシのタネにしてるんだよな、この人。信用ならない存在だ。

福島原発事故独立事故調査委員会 調査・検証報告書』(一般財団
法人日本再建イニシアティブ ディスカヴァー)読了。

機能不全。それに尽きるのではないか。政府、監督官庁東京電力
そのすべてが本来やるべきことが出来ていない。

首相であった官直人はリーダー・シップをはき違え、細々としたことに
まで口を挟む。そのいい例が原発事故翌日の現地視察だ。国家の
非常時に危機管理の最高責任者が、現地に赴くことになんの意味が
ある?

原子力安全・保安院は早々にメルトダウンに言及した職員を更迭し、
以降はメルトダウンに言及せず。言い方を様々に変えて取り繕う。
しかも原子力の専門家でもない人間ばかりが在籍している不思議。

原子力安全委員会のデタラメ…じゃなかった斑目委員長が「水素
爆発の可能性はない」と断言した直後に水素爆発。官邸からの
一切の信用を失う。

そもそも「安全神話」が出来たであろう安全対策の見直しに足枷を
かけていたのではなかったか。「原発は安全です」。そんなスロー
ガンに自縄自縛になっていた原子力ムラ全体が引き起こした
人災ではないか。

原子力安全・保安院も、原子力安全委員会も、原子力ムラ安全・
保安院であり、原子力ムラ安全委員会だ。ひとり、東京電力だけの
責任ではない。政治家にも、官僚にも、責任はある。だが、結局
それはうやむやになるのだろうな。

本書は国会の事故調とは別に、民間シンクタンクによる調査と検証で
ある為、東京電力福島県の協力が得られていない。その部分では
完全なものではないが、この国の機能不全を記録として残したこと
は評価出来る。