忘れてないよ

「もう9月になったけど、いつ行くの?」。うん、分かってるよ。でも、公休日は
いろいろとやることがあって時間が取れないのだ。

そう、上野の国立博物館で開催されている「古代ギリシャ展」である。会期は
今月25日まで。忘れている訳ではないのだ、ちゃんと覚えているよ。さて、
出勤日のどこかで早退させてもらって行くしかないかなぁ。

シフト表とにらめっこしようっと。

ローマ人の物語35 最後の努力[上]』(塩野七生 新潮文庫)を読み始める。

3分された帝国の再統合を果たしたアウレリアヌス帝が秘書の思い込みから
命を落とし、後を受けたプロブス帝も帝国の再建に尽力したのに部下の兵士
によって謀殺される。国を包む不安な空気は、人心も荒廃させるのか。

ガリアもパルミラも再度の統合なった。残されたのは大国ペルシアである。
このペルシア戦役へ向かう途中で、カルス帝が落雷で死亡する。あぁ、
天までもローマを見放したのか。

カルス帝の後にその息子が帝位に就くが、戦場で戦士。そして、やはり
人皇帝となるディオクレティアヌス帝の登場である。

いや〜、久し振りに格好いい男が出て来たよ。ディオクレティアヌス帝では
なく、彼が右腕として抜擢し、共同皇帝となったガレリウスである。

「他でもないペルシア人から、寛容の美徳を教えてもらうまでもない。不幸な
ヴァレリアヌス帝に対してのあなた方の振る舞いは、あれは何と評せばよい
のか。戦闘ではなく欺きによって捕らわれの身に落ちたローマ皇帝に、あなた
方は、彼が占めていた地位にふさわしくない境遇を与えつづけたのだ。ペルシア
王はその間、近隣諸国の王たちからの釈放の忠告にも、まったく耳を貸さなかった。
そしてこの不名誉に耐えきれなかったヴァレリアヌスが息を引き取った後も、その
遺体を民衆のあざけりの中に放置したのはどこの誰であったか」

「ローマ人は敗者を、足蹴にするようなまねは絶対にしない。それは、敗者への
心情への配慮というよりも、ローマ人自らの自尊心に反する行為になるからである。
皇帝が到着するのを待って、どのような条件ならば両国の間に、長くつづく平和が
もたらされるかを話し合うことになる。それが決定しだい、あなた方に伝えよう」

ローマ軍に敗北したペルシア王の死者への言葉である。帝国の歴史上、初の
皇帝捕囚の屈辱を、ローマは忘れることは出来なかった。それでも、敗者への
寛容の精神も忘れちゃいなかった。