革命家と独裁者の絆

教育勅語の朗読は、法に反しない限り問題ないのだそうだ。
言っているのは義家”体罰自慢”文科副大臣

もう一度「勅語」の意味を調べてから言ってくれ。

カストロフランコ──冷戦期外交の舞台裏』(細見晴子 ちくま新書
読了。

フィデル・カストロとフランシスコ・フランコ。片やキューバ革命
主導した革命家、片やスペイン内戦後に権力を握った独裁者。

対極に位置するはずのカストロキューバフランコのスペインは
東西冷戦の時代でも何故、国交を保ち続けたのかを元外交官で
あった著者が綴った作品である。

キーワードはいくつかある。対アメリカ外交であり、カトリック信仰で
あり、フィデルの父もフランコもスペイン・ガリシアの出身であること。

なかでも興味深いのはカトリックの総本山ヴァチカンの動きである。
2015年のキューバアメリカ間の国交回復の動きの裏でもヴァチカン
が大きな役割を担っていたものね。

神に仕える身でありながら、情報収集や外交手段には抜群の能力を
発揮するヴァチカンの存在って表には出て来なくとも世界の流れから
見たらとても大きいのかもしれない。

フィデルが少年期にイエズス会が運営する学校で教育を受けた影響
もあるのだと思われるが、社会主義体制下にあってもヴァチカンの
言うことに訊く耳を持っていたのだろうな。

元々スペイン植民地であったキューバだから共通言語を持っていた
強みもあったろうし、冷戦期に東側をけん制する為にどうしてもスペ
インに基地を維持したかったアメリカが、フランコのスペインに「キュー
バとの国交を断絶せよ」との圧力をかけられなかったのもあるんだ。

モラルと大義フィデルは亡命キューバ人から、フランコは共和国派
から。それぞれにボロクソに言われるけれど、アメリカ主導の世界経
済の流れから外れたところでお互いに国の生き残りを掛けての外交
を展開し、国交を維持して来た。

ただ、近年はこの2国間関係も変化を見せていると著者は分析してい
る。互いの国を支えて来た指導層の世代交代が、外交にも変化を与え
ているようだ。本書発行時点でフィデルはまだ存命だったが、フィデル
亡き後のキューバとスペインの関係はもっと大きな変化があるのかも
しれない。

時系列が前後するので若干読み難さはあるものの、元外交官らしく
外交文書等の資料を駆使した興味深い作品だった。

尚、著者は1996年の駐ペルー日本大使公邸占拠事件の際に、当時
勤務していたスペインの日本大使館からペルーに派遣されて支援を
行っている。この時、フィデルは公邸を占拠したMRTAというテロリスト
集団の亡命を受け入れるとの表明をしている。この為にもスペインが
動いていたようだ。

このフィデルの表明があったからか。犯人たちは人質に危害を加える
ことがなかった。キューバへの恩義を忘れなかった橋本龍太郎は首相
時代にキューバを訪問し、フィデルと8時間にも渡って議論したそうだ。

橋龍、そんなことをしていたのか。話し出したら止まらないフィデル
8時間もかぁ。見直しました。