安心して下さい、生きてますよ
電気、ガス、水道。料金を滞納したとしても、最後まで止める
のを待ってくれる、ライフラインの最後の砦である水道をこの
国は民営化しようとしている。
海外の事例に学ばないのかね?パリでは民営化後、水道料金が
とんでもない金額に跳ね上がり、公営化に戻したのにな。
テレビへの露出が減ると「消えた」「死んだ」と言われる芸能人たち。
なかでもお笑い芸人たちの露出度の入れ替わりは激しい。
芸人さんたちのネタ見せ番組が減ったことも影響しているのだろうと
思うし、こうした番組自体がブームを作り、露出が増えることで視聴者
に飽きられるのも早いのかなと感じる。
一発屋。一時のムーブメントを作り、いつの間にかメディアで見掛ける
ことのなくなった芸人は、それこそ掃いて捨てるほどいるのだろう。
そんななかでも、一発屋を自認する芸人9組と著者である山田ルイ53
世の髭男爵を加えた一発屋たちの「ブレイク後」を追ったのが本書。
レイザーラモンHGの「ハード・ゲイ、フォーッ」も、ムーディ勝山の
「右から左へ受け流すの歌」も、ジョイマンの「ナナナナ〜」のラップ
も、天津・木村のエロ詩吟も、とにかく明るい安村の「安心して下さい、
履いてますよ」も、結構好きなのよ。
私はAKB48が分からなくて、前田敦子だってキンタロー。の物真似で
知って、「へぇ、こういう子が人気なのか」と職場で言ったら同僚から
「それ、AKBのファンの前で絶対言ったらダメだからね」と釘を刺され
たのだ。でも、未だに前田敦子=キンタロー。なのだけどね。
ブレイクしたネタに行き付くまで試行錯誤を繰り返し、一気に時代の
波になっても忘れられるのも早い。しかし、彼ら・彼女らは決して
哀れな存在なんかじゃないと思う。
だって、メディアへの露出こそなくなったかもしれないが、一度はめちゃ
くちゃに輝いたのだから。そして、お笑いを諦めたのではないのだから。
著者の貴族スタイルでワイングラスで乾杯をする「ルネッサ〜ンス」も
私は好きなのよ。おまけにとてもいい声をしている。この髭男爵の誕生
秘話もあり、興味深く読めたし、彼ら・彼女らを一概に「消えた芸人」
扱いするのは消費する側の身勝手さもあるんじゃないかと感じた。
先に読んたカラテカ・矢部太郎氏の漫画といい、本書の著者である
山田ルイ53世といい、芸人さんの中には才能を隠している人たちが
まだまだいるのではないかと思う。
評論家と呼ばれる人たちではなく、自身も芸人である著者が客観的な
視点に立ちながら、時には対象に突っ込みを入れながら書かれた文章
はテンポも良く、著者の文才に驚く。
取り上げられている芸人さんたちを知らなくても、十分に読める作品
ではないかと感じた。
一発屋って哀愁を帯びた名称かもしれないが、どっこい彼ら・彼女らは
今でもお笑いの世界で生きているのだ。