ユートピアの実態はデストピア

先週の金曜日でめでたく(?)無職となった。派遣先の業務が
外部委託になって委託先の会社に移籍しての3か月、心底疲れ
てたんだなぁと思う。

我が家の白くまから「毒の抜けた顔をしてる」と言われた。今まで
どんなに険しい顔をしてたんだろうと思うわ。

さぁ、職探ししなきゃ。

共産主義黒書<ソ連篇>』(ステファヌ・クルトワ/ニコラ・ヴェルト
 ちくま文芸文庫)読了。

ナチス・ドイツの犯罪は多くの検証がなされて断罪されているのに、
共産主義が犯した罪の責任追及がおろそかになっているのではないか。

ナチスホロコーストより多くの人を死に至らしめたソビエト連邦の、
共産主義国家としての犯罪を詳細に追ったレポートである。

「人道に対する罪」のオンパレードである。否、それ以前に人権なんて
ことはまったくないのだ。ソルジェニーツィンの名作『収容所群島』な
らぬ、国家全体が収容所国家である。

「序」のあとに掲載されている主な収容所所在地の地図を見るだけで
分かる。確かにソ連は広大な領土だった。それでも「どんだけ〜」と
言いたくなるほど、収容所が各地にあった。

共産主義ユートピアなんかじゃない。正反対のデストピアだ。それも
権力者が自国民に牙をむくデストピアである。

集団化に反対した、教会に行っている、自分で作った農作物を売った。
そんな理由で逮捕され、強制的に移住をさせられる。

秘密警察と密告制度、裁判なしの処刑、ラーゲリ(収容所)送りは
スターリンが始めたのではない。レーニンから受け継がれた支配
体制なのである。

ニキータ・フルシチョフスターリンの死後に批判を行ったが、ひとり
スターリンだけを断罪すればことが済むのではない。スターリン批判を
行ったフルシチョフ自身が、スターリン体制化で頭角を現しているの
だから。

収録されている図版は多くはないが、飢饉の様子を捉えた写真からは
目を背けたくなる胸糞悪さをを感じた。幻想が生んだデストピア
現実が「これでもか」と詰め込まれた1冊だった。

「アジア篇」もあるのだが、こちらはしばらく時間を置いてからでない
と読めないな。