旅のスタイルには適齢期がある

「お客様のモラルに問います。スマートフォンでの
撮影はおやめください」

10月2日にJR新宿駅で起きた人身事故の際、ブルーシート
の内側にスマホを差し込んで撮影した阿呆がいるらしい。

それによって、異例のアナウンスが流れた。駅員さんに
こんなアナウンスをさせるほど、モラルは低下しているのか。

『旅する力 深夜特急ノート』(沢木耕太郎 新潮文庫
読了。

私の紀行文学の最高傑作『深夜特急』。やってみたかったの
だよね、アジアからヨーロッパまで乗り合いバスで行く旅。

憧れながらも結局は実行できずに今まで来てしまった。でも、
今から同じような旅をしようとしても、気力・体力共に衰え
ているなら無理なんだよね。

本書のなかで著者も書いているが、旅をするには適齢期がある
のだ。そう考えると、もう若い頃に憧れた旅のスタイルは憧れ
のままで終わるのが自然なのだと思う。

だから、本書は私の憧憬を再認識する為の読書でもあった。大学
卒業後の著者が物書きになったきっかけや、その時に培った人脈、
深夜特急』が生まれるまでの過程、旅に出る為の荷造りメモ、
訪れた地でのエピソードが満載。

若き日の著者はとにかく周囲の人たちに恵まれていたのではないか
と感じた。それは著者の人柄が、そういう人たちを惹きつけたこと
もあるのだろうな。

だって、サイン会では流れ作業的にサインをするだけではなく、会場
に訪れた人たちと必ず会話することを心がけていたというのだもの。

このサイン会でのファンとのやり取りが一部収録されており、著者の
人に接する時の温かさも伝わって来る。特に小学生の男の子との会話
にはほっこりさせられた。

深夜特急』を読み、その世界に魅了された読み手には2度おいしい
作品である。

映像版「劇的紀行 深夜特急」に出演した大沢たかおとの対談も収録
されている。

こうやって『深夜特急』誕生前夜からのエッセイを読んでしまうと、
本編を再読したくなる誘惑と、旅に出たくなる衝動と闘わなけれな
らないことにある。

あ~~~、行きたいっ!アジアからヨーロッパまで。

あ、極東ロシアからモスクワまでは行ったことがあるぞ。シベリア鉄道
だったけどね。モスクワに到着したした時、「さらばシベリア鉄道」を
口ずさんでいたわ。

 

旅する力―深夜特急ノート (新潮文庫)

旅する力―深夜特急ノート (新潮文庫)