危険度が相当に高い

先日、フランスの元大統領ジャック・シラク氏が亡くなった。
国葬にはプーチン閣下やクリントン元大統領など、各国が
要人を派遣して知るのに日本は駐仏大使だけっけ…。

日本の外務省ホームページにはシラク夫人に宛てた安倍晋三
のメッセージが掲載されているんだが、こちらは日本語のみ。

こういう時って、相手国の言語を併記するものじゃないのか?
どこへ向けてのメッセージだよ。

『巴里の空の下オムレツのにおいは流れる』(石井好子
河出文庫)読了。

日本シャンソン界の草分けでもある著者は、戦後間もなく
パリに渡った。その時の下宿先で亡命ロシア人の女主人
カメンスキー夫人が作ってくれた、バターたっぷりの
オムレツ。

冒頭のこのオムレツの描写だけでお腹が空くのよ。ハムや
玉ねぎ、チーズなどの具を入れてたオムレツもいいけれど、
何も入れないプレーンなオムレツが食べたくなるの。

人様の読書日記も危険だが、食べ物エッセイも相当に危険
だと思うの。高級店での食べ歩きや高級食材を使用した
所謂グルメじゃなくて、日常の食べ物を扱ったエッセイの
方が私にとっては危険度が高いのだ。

だって、作ろうと思えば自分で作れちゃうのよ。家に材料
さえあれば。

本書に出て来るのはオムレツの話ばかりではない。舞台が
はねた後の、カフェでの深夜の食事や、舞台の合間に食べる
サンドイッチ。

それに日本からパリに来た人たちをもてなす為の、著者の
料理の話もてんこ盛り。

カメンスキー夫人のオムレツ同様に、著者の料理も特別な
材料を使っているのではない。どこにでもある食材を使用
して、手早く簡単に作れる料理ばかりなのが嬉しいし、
危険でもある。

夜食に熱々のグラタンだよ。思わず冷凍庫に保管してある
市販の冷凍食品を食べそうになったわ。アブナイ、アブナイ。

エッセイ自体は雑誌「暮らしの手帖」に連載さ入れたもので、
初版の発行は1963年だから、パリの風景も今では違っている
だろうし、著者が食事をした店を探そうとしても出来ないか
もしれない。

ただ、時代が変わっても食べることの楽しみは変わらないの
ではないかしらね。

だって、私はやっぱりバターたっぷりのオムレツを作って食べ
たくなったし、パリに行った時に露店で勝った焼き栗の味が
蘇ってきたのだもの。

 

巴里の空の下オムレツのにおいは流れる (河出文庫)

巴里の空の下オムレツのにおいは流れる (河出文庫)