最悪を想定し、最善を尽くせ

「中国が約束したトウモロコシを買ってくれないんだけど、
それをシンゾーが買ってくれるんだ」

トウモロコシを買いにフランスまで行ったのか、阿呆晋三。

で、帰国して商社とかに命令するのかな。

「トランプ様にトウモロコシを買うよう命令されたから、君たち
買うように」って。

『富士山噴火』(高嶋哲夫 集英社文庫)読了。

書棚に買った覚えのない本があった。それが本書。君はどこから
来たのかね?ちょっとミステリアスである。

と言っても、本書はミステリーではなく災害小説。主人公は元
陸上自衛隊パイロット。3年前の南海トラフ地震で妻と長男
を失い、唯一生き残った長女との間には確執がある。

自衛隊を辞め、富士山を臨む高齢者介護施設の施設長を務める
主人公の元に、新聞記者となった高校の同級生から情報が入る。

近く富士山が噴火する。

入居している高齢者全員を、いかに安全に避難させるか。主人公
は最悪を想定して、最善の手段を取る。

日本の象徴である霊峰富士。過去に何度も噴火を繰り返し、現在の
姿になった。優美な山容を見せる富士山は、活火山である。なので、
本書のテーマとなっている富士山噴火は絵空事ではない。

遠くない将来、富士山が噴火したらどうなるのか。富士山の歴史や
火山がどのように噴火に至るのかの過程、注意しなけばけない前兆、
火山灰が降ったらどのようなことが起こるのか等を織り交ぜながら、
大規模災害と対峙する人々の姿を縦軸して、主人公の家族の再生を
描いている。

実際、内閣府のホームページでも富士山噴火を想定したハザード
マップなどが公開されている。しかし、それを前提とした防災訓練
が首都圏でなされていると言う話は寡聞にして聞かない。

怖かったんだよね、映画「ボルケーノ」を観た時も。この映画は
都市部で地震による火山活動が始まり、溶岩流が襲って来るとの
設定だったか。

富士山が噴火した場合、首都圏にまで火砕流・溶岩流は襲って来ない
のだろうが、広範囲が火山灰に覆われる。そうして、火山灰によって
停電などの様々な不具合に見舞われる。

もし、富士山の噴火が台風や豪雪と重なったら?と、読みながら悪い
方向へと考えてしまった。余計に怖い思いをしてどうするよ、自分。

ストーリー展開のスピード感もあり、ぐいぐいと読ませる小説だった。

「想定外」。東日本大震災福島第一原発事故の際に、何度も聞か
された台詞だ。万能な言葉だが、想定外にならぬよう最悪を想定し、
最善を尽くすのが防災なんじゃないかな。

 

富士山噴火 (集英社文庫)

富士山噴火 (集英社文庫)