作りものではない昭和モダニズム
ジャニーズ事務所の圧力だとか、吉本興業と反社会的勢力と
の繋がりだとかさ。もう、何を今更って話なのよ。
お前ら、ず~~~っと前から知ってただろう?ってテレビ局の
人たちに聞いてみたいわ。
『和菓子屋の息子 ─ある自伝的試み─』(小林信彦 新潮文庫)
読了。
東京市日本橋区、両国のすずらん通りにその店はあった。立花屋本店。
9代続く老舗の和菓子屋。10代目になるはずだったのが、本書の
著者である。
著者の記憶と、母方の祖父が残してくれた資料を基に、昭和20年
3月10日の大空襲で失わてしまった東京の下町を綴っている。
味噌や醤油がなかったら、隣の家に借りに行く。そんな「下町」は
テレビ・ドラマや映画に描かれた嘘っぱちの下町人情なのだそうだ。
少し分かるような気がする。ほら、「昭和レトロ」を売りした店舗
があるでしょう。絶対に平成に出来たお店なのに、わざと昭和っぽく
してるようなところ。
昭和生まれの私にゃ「けっ、こんなのしょうわじゃねぇよ」って感じ
てしまうのよ。それに通じるものがあるんじゃないのかな。
関東大震災と、東京大空襲で、東京の下町は2回破壊されているの
だが、関東大震災後に後藤新平が行った復興計画を著者は大いに
評価している。そして、戦後復興が東京の下町を殺した…とも。
これも分かる。今だって、防災対策の名の下、東京から路地をなく
そうとしているものね。
まぁ、こんな話ばかりではなく、著者が子供の頃に通った映画や
寄席の話、かなりモダンな建物だった立花屋本店の話、戦時色が
強まって行く世相など、戦前・戦中・戦後の下町の変遷が描かれ
ている。
『日本橋バビロン』もいい作品だったが、本書も下町言葉が収録
されていていて面白い。あとは『東京少年』を読めば、三部作
を読んだことになるのかな。
尚、所々で著者の弟・泰彦氏のイラストが掲載されている。