インドシナで括れなかったか

2020年の東京オリンピック聖火リレー、我が地元でも
行われるらしい。

へぇ、すごいねぇ(棒読み)。

『コレクション戦争×文学2 ベトナム戦争』(開高健ほか 集英社
読了。

第1巻である朝鮮戦争を読んだのはいつだったかを調べたら、
なんと2015年だった。第2巻を手にするまで約4年。

書棚には第4巻まであるのだが、全20巻+別館1のこのシリーズ、
私は一体いつになったら読破出来るのか不安になって来た。

さて、本書である。私が拘りをもつヴェトナム戦争なので本当は
第1巻より先に読みたかった。

ヴェトナム戦争と言えばアメリカ軍の戦争犯罪を暴露したノンフィ
クションが多数世に出ているが、本シリーズは「日本語で書かれた」
との括りがあるので海外メディア掲載の文章は皆無。

それでも日本人作家の手になる小説・ルポルタージュで、多岐に渡る
テーマでヴェトナム戦争を再考させられる。

特に惹きつけられたのがアメリカの北爆停止表明が出た時に取材の
為にハノイに滞在していた松本清張のルポ「ハノイからの報告」、
取材中に行方不明になった前任者の足跡を追う現地特派員を主人公
とした日野啓三の小説「向こう側」、終戦後30年のヴェトナムの
老婆の話を主題にした吉岡忍の小説「綿の木の嘘」の三編。

松本清張作品は多く読んで来たが、このルポは初見。なんという
タイミングの良さでハノイにいたのだろうと感じた。

他にも村上龍一ノ瀬泰造開高健などの作品も収録。一ノ瀬泰造
作品についてはヴェトナム戦争から飛び火したカンボジアが舞台なの
で本書も「ベトナム戦争」ではなく「インドシナ」で括ればよかった
のではないかな。

本書解説でも触れられているが、朝鮮戦争同様、ヴェトナム戦争にも
日本は深く関わっている。一時休暇で戦場を離れたアメリカ兵が心と
体を休めたのは日本だし、日本の米軍基地からは爆撃機が飛び立って
いる。

そうして、日本国内では反戦運動が起こり、アメリカ兵の脱走に手を
貸した人たちもいた。そのと当事者である小田実の作品も収録。

普段、ノンフィクションばかり読んでいる身にとっては、小説で戦争
を読む体験は新鮮でもあった。

巻末にはヴェトナム戦争関連の年表もあるので、その時、何があった
のかを知るのにも便利。

ただ、難点を言えばアメリカとの前にフランスとの戦争があったのだ
が、その部分の作品が皆無なところか。やっぱり「インドシナ」で
括って欲しかったな。

 

コレクション 戦争×文学 2 ベトナム戦争

コレクション 戦争×文学 2 ベトナム戦争