日本はいつまで科学大国でいられるのだろう

NHKの夜7時のニュースで、皇后陛下の初単独公務を流して
いる。その冒頭で歴代皇后と赤十字との関りをやっていたの
だが、なんで貞明皇后の写真だけないんだ?

初の単独公務より、そっちの方が気になってしまった。

『天才と異才の日本科学史 開国からノーベル賞まで、150年
の軌跡』(後藤秀機 ミネルヴァ書房)読了。

「第1回ノーベル賞受賞者として黄色人種はふさわしくない」

なんだと?その理由を述べてみろ。まぁ、人種差別何だろう
けれどね。

もし、第1回ノーベル賞の選考条件にこの項目がなければ、
1949年の湯川秀樹博士の受賞を待たずして、北里柴三郎
博士が第1回で日本人最初のノーベル賞受賞者になっていた
可能性は随分と高いのではないか。

だって、「ジフテリアに対する血清療法の研究」が評価されて
ドイツ人のベーリングが受賞しているのだから。

本書はこんなエピソードを絡ませながら、幕末から2012年に
ips細胞の研究でノーベル賞受賞者となった山中伸弥教授まで
の、日本人科学者列伝になっている。

あの有名な脚気論争についても勿論掲載。本当、厄介なお人
だよ、森鴎外。厄介なだけではなく鴎外のせいで多くの兵士
脚気で命を落としているんだものね。

いくらお勉強が出来ても、謙虚に自身の誤りを認めることが
出来ないのは鴎外のプライドの高さか。それで殺されちゃ
堪らないんだけどな。

夏目漱石が文学ではなく科学の道に進んでいたらどうなって
いたのだろうかとも考える。弟子である寺田寅彦への手紙に
「今日の新聞で原子理論に関する講演を読みました。私も
科学がやりたくなりました」とも書いているのだし、理工系
への進学の希望も持っていたのだから。

日本の科学の発展にとって欠かせない理研やそこに在籍した
研究者たちの話、戦争と科学者の関係、欧米の研究者との
国境や人種を超えた強固な繋がり。

研究者個人の資質もさることながら、連綿と続く海外の研究者
との個人的な繋がりが世界に大きく後れを取っていた日本の
科学界を飛躍させたきっかけにもなったのだろうと感じた。

213年の発行なので、最終章ではJCO臨界事故と福島第一原子力
発電所の事故に触れており、この章では事故に関わった官僚及び
科学者への批判がてんこ盛り。同じ科学者として、書かずにはいら
れなかったのだろうな。

若干、時系列が前後するので戸惑うこともあったが、戦中の731
部隊とミドリ十字の関係などもあり、概ね興味深く読めた。

この先、日本はまだまだ優秀な科学者を輩出できる国でいられ
るのだろうか。国は金にならない基礎研究に金を出し惜しんで
いるようだが。