記憶に残っていたのはノーパンしゃぶしゃぶだった

どうして森喜朗は突然、日本ラグビー協会の名誉会長を辞任
したの?

「竹田の次は俺か」とかいう、フランスの捜査当局の手が伸びて
来そうだからってことじゃないよね?

『会長はなぜ自殺したか─金融腐敗=呪縛の検証─』(読売新聞
社会部 新潮文庫)読了。

野村証券の総会屋への利益供与事件が発端となり、東京地検
特捜部の調べは第一勧業銀行へ飛び火した。

しかし、事件は拡大の一途をたどる。第一勧銀だけは終わらず、
火の粉は日本銀行、大蔵省にまで降りかかった。

1990年代後半の一連の金融不祥事は、リアルタイムで事件報道を
見ていたはずなのに、私の記憶に残っていたのは大蔵省の偉い人
が金融機関に接待され、行った先がノーパンしゃぶしゃぶだった
ことだった。

経済オンチが経済事件に接しても、この程度の認識しか残らない
のね。私の頭脳には。でも、ノーパンしゃぶしゃぶインパク
があったのよ。

さて、本書である。総会屋への利益供与や、大口顧客への損失補填
は当時の金融業界にあって「社会通念」だったのだろう。社内で
連綿と引き継がれて来たことだから、誰も「これはまずいのでは
ないか」とも思わずに続けられて来た。

それがある日、「ちょっと話を聞かせてもらおうか」と東京地検
特捜部が乗り込んで来る。証券会社も銀行も、寝耳に水だったの
だろう。

そうして捜査が進むと、第一勧業銀行元会長や政治家であった
新井将敬ら、6人が捜査の過程で自ら命を絶っている。

新井将敬自死については謀殺説も根強いようだが、改革派という
表の顔の裏で証券会社に「儲けさせてくれ。損失補填しろ」とやって
いたのだから逮捕目前での自殺は不自然ではないと思うんだよね。

ただ、6人もの自殺者が出たことで、東京地検特捜部の捜査自体が
批判の対象になってしまったのは残念である。

新井将敬だけではない。幾人もの政治家が新井将敬と同じように、
証券会社へ利益を強要していた。もし、新井将敬が自殺せず、
事件がどんどん政界にも波及していたらどんな政治家の名前が
浮上したのか興味が湧く。

本書では第一勧業銀行事件をメインに据えているので、その病巣
がどこにあるのか。歴代の会長・頭取からどのようにして悪癖が
引き継がれて来たのか。総会屋とはどのような存在なのかが平易
な言葉で分かりやすく書かれている。

この一連の事件から大蔵省は解体され、金融部門と財政部門が分離
され、財務省が誕生した。

それで浄化されたかと問えば、否なんだろうな。モリカケ問題の
発生源は財務省だものな。そろそろ財務省も解体しますか?

 

会長はなぜ自殺したか―金融腐敗=呪縛の検証 (新潮文庫)

会長はなぜ自殺したか―金融腐敗=呪縛の検証 (新潮文庫)