昭和がまた遠くなる今だからこそ

あぁ…ノートルダム大聖堂が燃えていたのよ。テレビをつけたら。
なんてことっ!パリだけじゃなく、世界が呆然だわ。

私の可愛いガーゴイルたちは無事なのだろうか。

天皇が十九人いた さまざまなる戦後』(保阪正康
 角川文庫)読了。

副題である「さまざまなる戦後」が単行本の時のタイトルだった。
これは文庫発行時に変えない方がよかったのではなかな。

有名な熊沢天皇をはじめとした、自称天皇を扱った章はわずかに
30ページほどでしかないのだから。

副題が示すように、人間宣言後の初の行幸となった昭和天皇
神奈川県行幸の2日間、戦争責任を一身に押し付けられた東条
英機、沖縄戦の「白い旗の少女」などを通して戦後の昭和を
描いている。

本書は再読なのだが、改めて読み返してみると天皇制を残そう
としたGHQが、自称天皇たちに興味を示し、あわよくば利用
しようとしていたことが分かる。

これは昭和天皇の神奈川県行幸に対して、GHQの一部が日本国民
昭和天皇に石を投げるだろうと期待し、冷笑的に行幸を見ていた
様子に重なる。

自称天皇たちはみなが南朝の末裔であることを拠り所にし、彼らの
言い分に根拠を与えた人物に取材出来ているのは注目だ。

東条英機の章では「東条日記」が貴重だし、東条の孫だと言うだけで
理不尽な扱いを受けた話は心が痛んだ。現代でいうところの、犯罪者
の進塁縁者へのバッシングだろう。これは日本の伝統なのか?

私は常々、重大事が起きても日本のお役所では誰も責任を負わない
システムが確立されていると感じている。真珠湾攻撃の際にアメリ
への通告が遅れたことの原因究明が何故、うやむやにされたのかを
追った「外務省の癒されぬ五十年前の過失」を読むと、責任の押し
付け合いや責任転嫁は連綿と続いていることが理解出来る。

他にも特攻隊員に自分を重ねることで生きた俳優・鶴田浩二、銀幕
スターでありながらどこか哀しみを抱えたような市川雷蔵、自分が
「白い旗の少女」であると本人が名乗りを挙げるまで写真が独り歩き
をしてしまった話など、再読に耐える内容だ。

平成も間もなく終わり、令和の時代がやって来る。それでも、昭和史
に対する興味は尽きない。

 

天皇が十九人いた―さまざまなる戦後 (角川文庫)

天皇が十九人いた―さまざまなる戦後 (角川文庫)