船長は乗組員のためにここにいる

「総理大臣でございますから、森羅万象すべて担当しており
ますので」

すっげぇな、安倍晋三。戦前の日本では天皇が現人神だったが、
それを超えて宇宙に存在する一切のものを担当する神になった
のかよ。

こんな馬鹿野郎が神様だから、日本は自然災害が絶えないんだな。
納得。

『キャプテンの責務』(リチャード・フィリップ ハヤカワ文庫)
読了。

旅客や乗組員等、船内にいる人すべての避難が済むまで船長は船舶を
去ってはならない。

でも、ティレニア海座礁・転覆したコスタ・コンコルディア号は
さっさと船外に逃げ出して塩害警備隊から「船に戻れ。船にはまだ
人がいる」と叱責された。

コスタ・コンコルディア号のように座礁も転覆もしなかったが、船に
乗組員全員を残したまま、船を離れた船長がいた。

アメリカ船籍の貨物船マークス・アラバマ号は、ソマリア沖を航行中に
海賊に拿捕された。リチャード・フィリップス船長は船と乗組員を守る
為に、自ら海賊たちと共に救命艇に乗り込み、貨物船を離れた。

2009年4月に発生したソマリア海賊によるシー・ジャック事件の中心
にいたフィリップス船長の手記が本書である。拿捕される数日前から
アメリカ海軍特殊部隊による船長救出作戦の成功後まで、自身の航海
や家族に対する思いや、船乗りとしての体験等を織り交ぜながら綴ら
れている。

救命艇で貨物船を離れ、海賊たちに命を脅かされながらも彼らを冷静
に観察している場面もいいが、なんといっても手に汗握るのは海賊たち
に乗りこまれた貨物船内で、以前に行った海賊対策訓練を確実に実践し、
まんまと海賊たちの裏をかき、乗組員たちを守る場面だ。

救命艇からの脱出の失敗、死の恐怖と対峙した時の心情も正直に記さ
れており、その臨場感が強烈に伝わって来る。

船と運命を共にすることで責務を果たす船長もいれば、船から離れる
ことで責務を果たす船長もいる。それが、船と乗組員を守る為であれ
ば、船長がいる場所が責務を果たす場所になるのだろう。

本書は「キャプテン・フィリップス」のタイトルで映画化もされている。
私はまだ観ていないのだが、原作を読んで俄然興味を惹かれた。そのうち
に映画も観てみよう。