両隣を大国に接した小国の生き残り方法

天皇皇后両陛下が6月9日から6月11日の間、在位中最後となる
福島県へご訪問された。

皇后陛下は38度を超える発熱があったのに、「周囲に迷惑をかけ
るから」と予定を変更されずにすべての日程をこなされた。頭の
下がる思いである。

今回は福島第一原子力発電所の近くを車でお通りになり、速度を
落とされて周辺をご覧になったとか。

天皇陛下は、見ているというよりも、見せているんじゃないかと
思う。国民に、この国の本当の姿を」

朝日新聞福島総局の三浦記者がTwitterで呟いていた。そうなのかも
しれない。両陛下の車両からは除染土を入れた大量のフレコンバッグ
が詰まれた風景も見られた。既に報道も少なくなった福島の現実を、
ご自分が訪れることで国民に見せているのかもしれない。

『物語 フィンランドの歴史 北欧先進国「バルト海の乙女」の
800年』(石野裕子 中公新書)読了。

フィンランドのロック・バンド、レニングラードカウボーイズ
ロシアの赤軍合唱団とのジョイント・ライブ「トータル・バラライカ
ショー」が行われた時、またロシアがフィンランドに嫌がらせに行っ
たのかと思った。

実際は非常にフレンドリーで素敵なライブだったし、赤軍合唱団の
主席ソリスト、ヴァレリ・ガッヴァなんてめっちゃいい笑顔で歌っ
ていた。実は映画された際のDVDを持ってるのだ、私は。

そう言えば、レニングラードカウボーイズレニングラード
現在のサンクトペテルブルクに改称された時、「俺たちのレニング
ラードを返せ!」と歌ってな。

フィンランド繋がりでくだらないことを書いた。さて、本書である。
ムーミンとサンタクロース、キシリトールとサウナの国フィンランド
なのだが、800年の歴史のうち、600年はスウェーデン支配下に、
その後の100年は帝政ロシア支配下にあった。

ロシアの支配下などと聞くと、どんなに過酷だったのかと想像して
しまう。だって、第二次世界大戦のどくさくに紛れてソ連が侵攻
して来た冬戦争もあったしさ。

しかし、帝政ロシア支配下でのフィンランドフィンランド大公国と
して大幅な自治が認められたことを初めて知った。スウェーデン
影響を薄めようと、この時代にはフィンランド語の公用語化が推進
され、民族としての意識を高めたのもこの時代だったそうだ。

森と湖に囲まれた穏やか国との印象の強いフィンランドだが、ソヴィ
エト・ロシアを支持する赤衛軍と反共派の白衛軍との内戦は、本当に
国を二分していたのだな。

そんなフィンランドのロック・バンドが「俺たちの連イングラードを
返せ!」と歌っていたのだから、フィンランド人というのは実に寛大
な心を持った人たちなのかも。

800年を新書で描いているのでかなり駆け足の部分もあるが、独立後の
混迷や、東西冷戦時代に極力ソ連を刺激しないようにと考えた外交など、
スウェーデンとロシアという大国に挟まれた小国の、独立を守り、生き
残る為の術だと捉えれば理解も深まると思う。

尚、政治面ばかりではなく文化・芸術などにも触れられており、フィン
ランドの禁酒法やサンタクロース、ムーミンなどに関してのコラムもある
ので読みやすい通史になっていると思う。