名作を駄作にする方法

まだ5月だっていうのに、北海道で気温39℃。なんかおかしい
だろう…と思っていたら、あの人が北海道にいたのか。

松岡修造である。北海道でテニス教室をやっていたらしい。
やっぱり異常気象と関係があるだろう。

閑話休題

大好きな岸部一徳が出演するから、うっかり見てしまったの。
テレビ朝日のドラマ「白い巨塔」を。

もう、何もかもがダメ。キャスティングも、脚本も、演出も、
音楽もダメ尽くし。

岡田准一の財前教授は小さいし、寺尾聡の東教授はホームレス
にしか見えないし、松重豊は好きな役者だけど鵜飼部長を演じる
には「いい人」オーラが出ちゃってるし、何よりも堅物の大河内
教授が一徳さん。

重松豊と一徳さんの役は入れ替えた方がよかったんじゃないか?

松山ケンイチの里見先生は研修医しか見えないし、全体に重厚感
に欠けてるんだよな。

山崎豊子が存命中、前回のリメイク版の唐沢寿明の財前教授にも
当初は難色を示していたようだから、今回のちんちくりんの岡田
財前なんで噴飯ものだろうな。きっと草葉の陰で激怒しておられ
るはずだ。

原作自体が古い作品だから、現代風にすることにも難題はあるの
だろう。私としては財前教授はやっぱり田宮二郎だし、唐沢版
(ネットの動画サイトで視聴)での鵜飼部長役の伊武雅刀
怪演もよかった。

取りあえず、名作のリメイクにジャニーズを使うのは止めて
欲しいわ。


還れなかった言葉の方がいいのだろう

アメリカ・トランプ大統領が来日である。今回は羽田空港
降り立った。

でも、警視庁の交通規制情報を見ると離日する5月28日は
首都高の湾岸線に規制が入らない模様。

ということは、赤坂プレスセンターからヘリで羽田または
横田基地へ移動ってことかな?

『最後の言葉 戦場に遺された二十四万字の届かなかった
手紙』(重松清/渡辺孝 講談社文庫)読了。

太平洋戦争の激戦地を辿るNHKのドキュメンタリー番組を
作成する過程で、アメリカ・ワシントンの国立公文書館
20余りの文書が発見された。

それはアメリカが日本と日本人を分析する為に、戦場に残され
た日本軍将兵の日記や手紙を翻訳した文書だった。

日本に残して来た家族に届かなかった言葉。戦後60年近くを
経て、戦場に遺されていた思いを家族に届けることは出来ない
だろうか。

作家・重松清をナビゲーターとして放送されたテレビ番組の
書籍版である。

サイパンで、ガダルカナルで、ニューギニアで、ソロモン戦線
で。それぞれに命を落とす寸前まで、極限状態に置かれてなが
ら家族への、想い人への、戦争への思いを綴った人たちがいた。

「この戦争は間違っている」「死にたくない」。アメリカ軍の
物量作戦に圧倒され、補給も経たれ、劣悪な環境に捨て石にさ
れた人々の、正直な思いが溢れている。

そうして、遺骨さえ還って来なかった家族の元に届けられる
「最後の言葉」たち。

このように書くと非常に感動的なのだが、いかんせん、私には
ナビゲーター役の作家・重松清の視点が邪魔だった。「ほら、
感動しなさい」と言われているようで興ざめ。発見された日記や
手紙の内容に思いを馳せる気持ちが分断された。

多くの将校や兵士が、祖国へ帰れぬだろうと思いながら日記や
手紙を綴り続けたのだろう。本書に取り上げられている4人は
ほんの一部だと思う。

たまたま、遺族を探す手がかりがあったから、家族の元へ届ける
ことが成功し、番組として成立したのだよね。

公文書館に英訳が保存されていた文書以外に、戦場で連合軍兵士
が個人的に持ち帰ったものもあっただろうし、それは今でもどこ
かの家庭で眠っているのかもしれない。

「グンイドノハヤクアゴヲ/ツケテ下サイ、ミンナト一ッシ/
ョニゴハンヲタベラレル/ヨウニシテ下サイ/グンイドノフネハイツ/
クルデスカ/ゴハンガタベタイナ/タンヲトッテ下サイ/ダンヲトッテ
下サイ/クチノナカノチヲフイテ/下サイ/モウネリタクナイ/ヒトリデ
小便マリマス/デ/ベンキカシテ下サイ/スマナイカ角ザトウ一ツ二ツ
モラ/ッテクレナイカネ」

これは『昭和の遺書 55人の魂の記録』(梯久美子 文春新書)に
収録されている筆者不明の文書である。軍医が持ち帰ったものだが、
このように文書が残されていても誰が書いたかが分からず、遺族へ
届かなかった文書も多くあるのだろう。

せめて言葉だけでも、想いだけでも、家族の元に帰れたらいいの
にね。

 

最後の言葉 戦場に遺された二十四万字の届かなかった手紙 (講談社文庫)

最後の言葉 戦場に遺された二十四万字の届かなかった手紙 (講談社文庫)

 

 

日本はいつまで科学大国でいられるのだろう

NHKの夜7時のニュースで、皇后陛下の初単独公務を流して
いる。その冒頭で歴代皇后と赤十字との関りをやっていたの
だが、なんで貞明皇后の写真だけないんだ?

初の単独公務より、そっちの方が気になってしまった。

『天才と異才の日本科学史 開国からノーベル賞まで、150年
の軌跡』(後藤秀機 ミネルヴァ書房)読了。

「第1回ノーベル賞受賞者として黄色人種はふさわしくない」

なんだと?その理由を述べてみろ。まぁ、人種差別何だろう
けれどね。

もし、第1回ノーベル賞の選考条件にこの項目がなければ、
1949年の湯川秀樹博士の受賞を待たずして、北里柴三郎
博士が第1回で日本人最初のノーベル賞受賞者になっていた
可能性は随分と高いのではないか。

だって、「ジフテリアに対する血清療法の研究」が評価されて
ドイツ人のベーリングが受賞しているのだから。

本書はこんなエピソードを絡ませながら、幕末から2012年に
ips細胞の研究でノーベル賞受賞者となった山中伸弥教授まで
の、日本人科学者列伝になっている。

あの有名な脚気論争についても勿論掲載。本当、厄介なお人
だよ、森鴎外。厄介なだけではなく鴎外のせいで多くの兵士
脚気で命を落としているんだものね。

いくらお勉強が出来ても、謙虚に自身の誤りを認めることが
出来ないのは鴎外のプライドの高さか。それで殺されちゃ
堪らないんだけどな。

夏目漱石が文学ではなく科学の道に進んでいたらどうなって
いたのだろうかとも考える。弟子である寺田寅彦への手紙に
「今日の新聞で原子理論に関する講演を読みました。私も
科学がやりたくなりました」とも書いているのだし、理工系
への進学の希望も持っていたのだから。

日本の科学の発展にとって欠かせない理研やそこに在籍した
研究者たちの話、戦争と科学者の関係、欧米の研究者との
国境や人種を超えた強固な繋がり。

研究者個人の資質もさることながら、連綿と続く海外の研究者
との個人的な繋がりが世界に大きく後れを取っていた日本の
科学界を飛躍させたきっかけにもなったのだろうと感じた。

213年の発行なので、最終章ではJCO臨界事故と福島第一原子力
発電所の事故に触れており、この章では事故に関わった官僚及び
科学者への批判がてんこ盛り。同じ科学者として、書かずにはいら
れなかったのだろうな。

若干、時系列が前後するので戸惑うこともあったが、戦中の731
部隊とミドリ十字の関係などもあり、概ね興味深く読めた。

この先、日本はまだまだ優秀な科学者を輩出できる国でいられ
るのだろうか。国は金にならない基礎研究に金を出し惜しんで
いるようだが。

 

 

未だに「噂の真相」休刊を惜しむ読者がいるとの噂

今月下旬に来日予定のアメリカ・トランプ大統領が、大相撲
夏場所の千秋楽をご覧になるらしい。

それに伴って、正面升席全席が抑えられたとか。しかも、升席
に椅子を置いて…だとさ。

遂に国技まで安倍晋三の外交パフォーマンスに利用されるのか。
これまで一度も千秋楽に来たことないのにね。プンスカ。

噂の真相一行情報大全集』(噂の真相編集部 イースト・プレス
読了。

表紙の「今月の標語」をさらっと読んで、グラビアを眺め、とびらの
イラストにニヤッとする。そうしてから掲載記事を…読まずに、左側
のページに32文字以内で書かれた「一行情報」にざっと目を通す。

2004年に休刊したスキャンダル雑誌「噂の真相」の、私の読み方で
ある。好きだったのよ、この「一行情報」が。それを全部まとめて
1冊にしちゃったのが本書である。

「得た情報はなるだけ読者に提供したい」との故・岡留編集長の読者
へのサービス精神で掲載されていた人気コーナーだ。

本書では岡留編集長と、同誌で連載を持っていた永江朗の対談が収録
されているのだが、記事よりも真っ先に一行情報を読んでいた私の
ような読者が結構いたみたいで安心(何が?)。

リバイバルブームの山口百恵を上海の新聞が「楊貴妃の末裔」との
謎の報道」

確かに謎。でも、百恵ちゃんは菩薩なのである。

内田裕也樹木希林のスイス留学中の娘とホモ説の本木雅弘
婚約説が」

後に本当に結婚されたものねぇ。

岩井志麻子中村うさぎ・倉田由美子に呼びつけられた本誌
編集長が遁走」

この3人に呼びつけられたら岡留さんじゃなくても怖くて遁走
するでしょう。

白夜書房社長が郷愁派バナナ好きを隠しメロンや西瓜好きに
偽装転向説」

どうでもいい情報だけど、この白夜書房シリーズは好きだった。

「バナナ郷愁派の社長率いる白夜書房阪神大震災で三百万円の
義援金を」

この情報、「バナナ郷愁派」必要かぁ?

文壇論壇の喧嘩情報から政治家の下半身スキャンダルまで。毎月、
楽しみに読ませてもらった。

巻頭からは分野別「一行情報」の傑作選、巻末からは月別の「一行
情報」を全部掲載している。老眼の身には読むのが少々辛かったが、
これは永久保存版だ。

尚、未だに「噂の真相」休刊を惜しんでいる読者とは私のことである。

何が彼ら・彼女らを突き動かしたのか

アニメ「機動戦士ガンダム」に登場するロボットの小型模型を
宇宙に運んで東京オリンピックを応援しよう!

えっと…登場人物がいっぱい死んでいる戦争のアニメのロボットに
応援させていいんですかね?

『万国奇人博覧館』(J-C・カリエール/G・ベシュテル ちくま文庫
読了。

嫌ぁぁぁぁ。いくら奥様を愛していたからと言って、死後にその
脳の一部を指輪に加工して身に着けるなんて嫌ぁぁぁぁ。

嫌ぁぁぁぁ。殉教者になりたいからって、蜘蛛を大量に食べるなん
て嫌ぁぁぁぁ。

嫌ぁぁぁぁ。自分の排せつ物に執着するのは構わないけれど、その
日の排せつ物を箱に収めて会う人ごとに見せるのは嫌ぁぁぁぁ。

などと思いながら読んでいたのだが、700ページを超える奇人の
お話を通読してしまうと、途中から「なんだ、大したことない
じゃん」と読む方の感覚が麻痺して来るようだ。

芸術家や文人、学者、皇帝などの著名人から無名の庶民まで。
風変わりな人生を送った人たちの一大カタログである。

タイトルに「万国」と入っている割には、その人選のほとんどは
ヨーロッパが占めている。

アジアは日本のみ。三角形にこだわった徳田サネヒサや、特異な
ファッションで一時期バラエティ番組に引っ張りだこだった大屋
政子さんが取り上げられている。

ヨーロッパが主体の為、宗教に端を発した奇行も多い。柱頭の上で
片足だけで過ごすとか、自分の体を無知で打ち続ける苦行とか。
ならば、仏教の修行者の即身成仏も奇行に入るのかな?

本書ではわずか3行ほどしか触れられていない「チフスのメアリー」
なんてメアリー本人にはなんの罪もないんだけどな。ただ、チフス
菌の健康保菌者であったと言うだけなんだものな。

また、時代が変われば奇行も変わるで、世界一周が奇行とされた
時代もあったのだね。

「奇行」で括ってしまうにはどうか?と思ったのは、不治の病で
クリスマスを迎えられないだろう妻の為に、市長や町の人たちを
巻き込んで11月に町中をクリスマスにした男性のお話。不覚にも
ほろりとした。

「どうしてそうなった?」と思う人生がぎっしりと詰まった大作
である。通読しなくとも、折々に拾い読みする方がいいのかも。

尚、イギリスとドイツに対する揶揄がところどころに出て来るのは
著者がフランス人のせいか。

 

 

万国奇人博覧館 (ちくま文庫)

万国奇人博覧館 (ちくま文庫)

 

 

関西圏の土壌が育んだ?

北朝鮮が立て続けに何やら発射したみたいだけれど、
もうJアラートは鳴らさないの?

アメリカに届く大陸間弾道ミサイルは日本の脅威なのに、
日本海に落ちたらしい短距離弾道ミサイルは「我が国の
安全保障に影響はない」になってしまうのはどうして?

教えて、安倍晋三

『アフリカ少年が日本で育った結果』(星野ルネ 毎日新聞出版
読了。

母の結婚に伴い、アフリカのジャングルから日本という異文化の
国へやって来たのはわずか4歳の時。

突然、言葉の分からぬ環境に放り込まれることになった著者が、
その生い立ちを漫画で綴ったのが本書である。

Twitterで人気の作品だったこともあり、いくつかの作品はネット
上で読んでいたが、書籍化に際して多くの書下ろしも収録されて
いる模様。

私が特に惹かれたのは著者のママであるエラさん。

高校の入学式。新しい環境になると肌の色でもっとも注目を浴び、
本人の意思に関わらず目立つ存在になってしまう著者。高校でも
そのことを気にしていた。

だが、新入生たちの視線を釘付けにしたのは著者ではなかった。
可愛い息子の入学式とあって、気合を入れた民族衣装で学校に
現れたエラ・ママであった。

このエラ・ママ。大型家具を一人で移動して模様替えをしたり、
故郷カメルーンでは広大な畑を耕したりと、逞しい女性なのだが
ミミズだけは苦手だそうだ。

エラ・ママと見る野生動物のドキュメンタリー番組はグルメ
番組に早変わりする。「あれは食べた。これは最近食べてない」
などの会話が交わされるとか。

エラ・ママとお父さんの馴れ初め、著者の出生の秘密(?)、
カメルーンという国について、日本で生きる外国人が感じて
いるであろうことが満載。

きっといろいろと嫌な思いもして来たのだろうと思う。でも、それ
お深刻に描くのではなく笑いに昇華させているのではないかな。
日本に来て、育ったのが関西圏というのも影響があるのかも。

尚、著者が友人のバイト先である日焼けサロンを訪れた時に、待合室
にいたおっちゃんが発した一言が結構ツボに入った。

「お、おにいちゃんはもう焼かんでええやろ!」

容赦なく突っ込む関西人。関東でこの突っ込みは無理だろう。

国際結婚で異国人の伴侶を得て日本で暮らし、習慣や文化の違いから
起きる日常生活のエピソードを綴ったエッセイやコミックとはひと味
違った作品だと思う。

弱い者いじめ

保育園児が犠牲となった、昨日の大津市の交通事故は
本当に痛ましい。

被害者である保育園側が開いた記者会見を夜のニュースで
見たのだが、マスコミの嫌な部分が出たような会見だった。

あの会見自体が必要だったのかには疑問もある。しかし、ただ
でさえ自分のところで預かっていた園児たちに多大な被害が
出て呆然としているであろう園長さんを追い詰めるような
質問をする記者って何だ?

園児たちの当日の様子だとか、散歩コースの交通量とか、安全
確認がどうだとか。

園長さん、泣き崩れてたじゃないか。鬼か、マスコミは。保育園
側に非があったとでもしたいような質問ばっかり並べやがって。

あのような会見なら、政治家の会見と同様、まずは所属と名前を
名乗ってからにしてみてはどうか。

弱い者には強気に出るんだよな、マスコミは。だからマスゴミって
言われてしまう自覚もないんだろうな。

被害に遭われた園児たちとそのご家族、園長先生をはじめ保育士さん
たち。身の毒過ぎて言葉もないわ。